露労

社会主義国で一番気分が悪いのは「サービス」。元々そういう概念がないためです。
がさつに商品を突きつけられたり、代金をひったくられ、おつりを放り投げられたり、日本と言わず多くの資本主義国からの観光客の気分を害しているのは事実です。

とはいえ今はロシアであれ中国であれ、自由時お金を稼ぐことができます。自分の才覚次第で収入を上げられるのですからそこは自分のやり方と言うことで。しかしながらサービスのようなものはある程度はノウハウなので、一朝一夕にはできません。マクドナルドのようにノウハウを持った企業に入るか、個人で努力するしかありません。

先日ロシアに行った際、非常に感心した事がありました。
友人宅の近くにあったカフェに行ったときのことです。
最近のロシアではカフェに行き、コーヒーやスィーツを食べるのが習慣になっているようですが、なかなか日本人が感心するレベルの店がありません。
その店は超大型スーパーの中にある新しいカフェなのですが、そこで若い女性が二人、働いていました。そのうち一人はなかなか美人というか可愛らしいところがあり、何とはなしにしばらく見ていたのですが、彼女の勤労態度がよかった。食器を洗うにしてもレジで対応するにしても、テーブルを拭いたり商品を並べるときも楽しそうに笑みを浮かべて仕事をしています。美人が微笑んでいるときぐらい見ている方も楽しくなることはありませんが、その中でも圧巻だったのはカプチーノの泡で模様を作るとき。恐ろしく真剣になり、ものすごく集中して描くのですが、一つ一つ違う模様になっています。

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私が頂いたのは写真のようなもの。友人はハート型でした。泡のきめ細かさや模様の美しさ、彼女が日本で働いても十分通用する非常に優れた技量です。
楽しみながら、自分の好きな仕事をするという人も現れてきたのかなと思った次第。カフェの店員さんの給料が高いとは思えませんが、仕事を好きになり、誇りを持ってそれに打ち込める人は間違いなく勝者です。こういう人が成功を収めるのだと思います。
翻って今日の日本では派遣業や契約社員が増大してなまくらな就業者が多くなっています。正規社員の全員が仕事に誇りを持っているかどうかかなり怪しいものですが、そういう土台を奪ってきている現状には危惧を覚えます。

帰路、空港で息子が旅客機の整備を見ていたときでした。整備を終え、整備員さん達が車に乗って去るときにそれを見ていた息子に気付き、にこやかに手を振ってくれました。夕暮れ時の暑い時間帯です。疲れていたことでしょう。でも彼は息子に気付き手を振ってくれました。息子も手を振り返しました。私はこういうところにロシア人の変化を見た気がします。

蛇足ですが、アエロフロートのパイロットの腕はかなりのものだと思います。旅客機のパイロットの技量は離着陸時のうまさでしか分かりませんが、前回と今回いずれも他社に比べるとかなりうまいように思います。

そういう意味で、今少し時間をかけて社会主義時代の弊害から脱して、よりよい社会を作っていってくれたらと思います。


平成二十四年葉月二十日
不動庵 碧洲齋