平成二十六年式兵糧丸備忘 其之一

私は今まで10数回ほど兵糧丸を作ってきましたが、それについて。

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兵糧丸は現代で言うところのちょっと高価なカロリーメイトのようなもので、戦場にて会敵する直前、しかもしばらく長期戦になる場合などに食べたのではないかと思います。
レシピは特に決まったものはないようですが、主に
そば粉
米粉
きな粉
すり胡麻
山芋
蜂蜜
出汁

です。それに干し梅などを入れた場合もあったようですが、400年前の感覚で言うなら、米粉は多分高級品です。米自体が高級品でしたから、それを臼でひいた食材は高級品だったのでしょう。ごまは「ごますり野郎」とか言う表現もあるように、奈良時代では薬に用いられるほどの高級品でした。またきな粉も同じく高級品、これも奈良時代では薬として用いられました。蜂蜜はいうまでもなく超高級品。薬用であったことは言うまでもありませんが、400年前なら高級武士でもそう簡単には手に入らなかったかと。酒にしても時代劇ではよく飲まれてますが、実はこれも高級品。酔っ払えるほど飲めるようになったのは江戸時代の半ば以降ぐらいからかと思います。山芋は兵糧丸のつなぎとして用いられますが、これもまた加工したものは山薬と呼ばれた生薬です。これはそれほど高級品ではなさそうです。また、そば粉も粉ものの中では比較的安価でした。そもそもそばは痩せた土地で作られる作物でしたから、そばが有名な地域はその昔は貧しいところでした。

以上、8つの食材のうち、そのほとんどが高級食材か薬用食材、もしくはその両方でした。貧しい人々が戦に駆り出されるに当って、夫や息子が戦場から生きて帰ってくることを願い、女子供や老人たちはなけなしのお金や高級作物と大変な労力を使ってこれらを買い求め、拵えたと考えられます。少なくともコンビニで売っているカロリーメイトの比ではありません。祈りを込め願いを込め、家族や一族郎党が作ったのだと思います。私は兵糧丸を作るときはいつも、そんなことを思います。

今回、私は兵糧丸のレシピの割合を変えてみました。
まず、現代においてはこれらは高級品ではありません。また、長期保存や栄養価よりも「おいしく」食べられるかどうかという視点が重要になってくることから、ある程度比率を変えねばならないと思っていました。

米粉の比率を少し増やし、すり胡麻の比率を下げる。また蜂蜜の量も増やす。今回、たまたま自宅にあった「きな粉・ごま・アーモンド」の粉を使ってみました。また今回出汁は抜き。昨日はつなぎの量がやや失敗して水をコップ1杯半足してしまいましたが、本来これは山芋と酒と蜂蜜の量を増やせば水はほとんど要らないかと思います。蒸す時間は概ね20分。これは難しくありません。

蒸し上がったらできるだけ通気性のよい所において乾燥させます。ただこれもまた戦場ではないので、個人的にはすぐ食べても良し、できたら1週間以内がよいかと思います。米粉を増やすとかびる可能性が高くなりますが、酒や蜂蜜を増やせば多少防げるかも知れません。米粉を増やすと団子の食感に近くなります。今までの兵糧丸はそば粉の食感が主体でしたが、今回は明らかに米粉の勝ちでした。故にあまり長く持たない。また蜂蜜を多めに入れたのでほのかな甘さが心地よかったのですが、多分まだ足りない。今日作るときはその倍ぐらいがよいかと。ここまで米粉が多いと作ってすぐの方がおいしいかも知れません。個人的にはあんことかたれとか、普通の団子のようにしても良いのではないかと思います。

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量は大体適当です。スーパーで袋ごと買ってくると思いますが、余らせても他に使い道がなさそうだったら余らないように作るべきです。

大きさはピンポン球大。串刺し団子よりは一、二回りほど大きい感じでしょうか。戦国時代では野球ボールぐらいの大きさだったそうですが、あまり実用的ではないような気がします。ピンポン球大のを3つも食べるとかなり満腹感があります。

今回は同門の結婚パーティーの余興とその翌日の時代祭のために倍量を作らねばなりませんでしたが、なかなか良い経験だと思います。明日また第二弾を書きます。


平成二十六年皐月十四日
不動庵 碧洲齋