ロングセラー

機械においてその機構が長いこと使われているという場合は、間違いなくその構造が優れているためです。
一般の機械でも当てはまりますが、軍事においてひとつの兵器が長いこと使われ続けてきているというのはある意味驚異的でもあります。何故なら通常、軍事とはその国家における最先端科学、工業が結集したものであり、日進月歩が早い事でも知られているためです。長らく固有の兵器が使われることには他に理由もありますが、ともあれまず何よりもテッパンの技術と機構でかつ「優秀」であることは間違いありません。

ここに2つ、米国はもちろんのこと、今なお世界の多くの国で使われている銃器を2つほど、ちょっと紹介したいと思います。武器の功罪よりもメカとして長生きしているという点でご了承下さい。

1つはブローニング社が開発、製造している、M2重機関銃。開発されたのはなんと第1次世界大戦末期。米軍に制式採用されたのは1933年。以後第2次世界大戦を経て、現在に至るまで多くの国で採用、ライセンス生産されているこの重機関銃、陸上用はもちろんのこと、海上艦艇、第2次世界大戦の頃は航空機にも搭載されていました。ちょっと調べても出てこなかったのですが、第2次世界大戦時までにすでに200万挺も生産されたとのことです。この重機関銃が大変優秀であることはもちろんですが、米国の工業力が如何に巨大で優れていたかという証左でもあります。今後もしばらくは新型などに替わる予定がないそうですから、100年は使われることでしょう。

この機関銃は他に類を見ない程に大変、低伸性が高い火器なのです。「低伸性」とは、どれだけ真っ直ぐに弾丸が飛ぶか、ということ。普通砲弾も弾丸も重力の関係で弾道は放物線状になります。山なりになります。しかし火器の場合、なるべく真っ直ぐに飛んでくれた方が命中させやすいということになります。そういう点でこのM2は他の火器と比べて恐ろしいほど真っ直ぐに弾丸を飛ばすことができます。普通、狙撃銃ではライフル銃が使われ、機関銃は使われませんがこのM2、これまた例外的に狙撃にも使われるほどの性能です。

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昨日、陸上自衛隊の総合火力演習に行ってきて、実際に射撃するのを見ましたが、たかだか口径12.7mmと侮る勿れ、噂に違わぬ凄い迫力でした。
戦時中の話しですが、私の母方の祖母、叔母、母、叔父は空襲時に戦闘機で機銃掃射を受けましたが、当時の米軍戦闘機のほとんどはこのM2を装備していましたから、このM2が4-8挺を束にして銃撃されたことになります。祖母はまだ20台で乳飲み子の叔父を抱いて、5歳だった私の母、7歳だった叔母を両手に繋いで走っていたそうです。幸いにもパイロットは本当に殺すつもりがなかったようで、数回機銃掃射をした後、旋回しながら手を振って去って行ったそうです。母はそれを強烈に覚えていて、中学生ぐらいになるまで時折夢に出てきたそうです。

昨日までは「話しに聞いていただけ」ですが、実物のM2の銃撃を見て正直びびりました。1挺でもあの威力です。4-8挺で銃撃されたら当らなくても気絶しそうです。
あ、暗い話しばかりでは何ですので。かの映画「戦国自衛隊」で、戦国時代で知り合った長尾平三景虎殿が爽快とばかりに撃って喜んでいた機関銃もM2です。まあ、気持ちは分からなくもありませんけどね。

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もう一つはコルト社が開発製造していた拳銃のM1911。一般的には「コルトガバメント」という名前で知られています。文字通り1911年に米軍に採用されて以来、1985年まで74年もずっと米軍の制式採用拳銃でした。これは日本の自衛隊でも最近まで使われていました。警察でもまだ使っているかも知れません。世界的にももちろんまだ広く使われていますし、米国国内でも圧倒的に人気のある拳銃で、色々なカスタムパーツ、他メーカーによる製造が行われています。奇しくも1911年は12月まであった最後の明治の年、明治44年でした(明治時代は45年7月で終わり)。1911年当時、使われていた拳銃のほとんどはリボルバー式で、自動拳銃はほとんど普及していませんでした。自動拳銃はこのM1911から普及してもよいと言っていいぐらい、世界的に使われるようになりました。M1911のメーカーこそコルト社ですが、米国内外の色々なメーカーでも生産されています。

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多分映画やドラマでも一番たくさん出てきた拳銃の1つではないでしょうか。ベトナム戦争ぐらいまでの戦争映画では必ず出てきます。「ルパン三世」の銭形警部が愛用しているのもこのM1911です。
現在ではコルト社のパテントが失効しているので!様々なメーカーからあらゆるカスタマイズされたパーツが出ていて、大変改造しやすい拳銃です。今年でM1911が作られてから105年ですからどれだけ凄い拳銃か分かろうものです。

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以上この2つの火器は他に類を見ない程に非常に長い間使われてきています。何か新しい機構が発明されて、最初に天才的な人がそれをデザインすると、50年100年と使われ続けるものです。例えばガソリンエンジンなどは気筒を用いてシリンダーを爆発によって上下に運動させるという機構も100年以上も使われてきていることも良く知られています。ごく最近になって、電気や燃料電池が取って代わり始めて来ています。

「戦車」も1918年頃から現在に至るまで、キャタピラー、砲塔というスタイルをずっと踏襲しているものがほとんどです。兵器の中でも戦車などはある意味もっともよく使われている内燃機関式の兵器ですから、もっと進化してもよい気がしますが・・・もっとこれに勝る機構がないのでしょうね。人型ロボット兵器などはあまり有効ではないようです。残念ながら(笑)

それに比べると航空機は恐るべき進化を遂げていますね。

それだけ普及させることのできる製品というものが滅多に現れないものなのです。


平成二十八年葉月二十九日
不動庵 碧洲齋